1粒300円のチョコは宇宙
父にバレンタインのお返しをもらった。
ホワイトデーの少し前だった。
「今回は小さいけど、良いヤツだよ」
私はたくさん食べたい気分だったので、小さな箱に3粒入ったチョコレートに、少しだけがっかりした。
つまんだ1粒は確かに美味しかった。
東京駅でありとあらゆる美味しい食べものに囲まれていたある日。
(あら?見覚えのあるマーク…)
父がくれたチョコレートを売るお菓子屋さんだ。
出来心でもらったお返しの値段を見た。
(ゲゲゲ、1粒300円以上…)
残りの2粒も遠慮なく食べた。
でも思い返すたび3センチもない立方体に、ハンバーガー3つか、食パン3斤か、ドーナツ3つがぎゅうぎゅうに詰め込まれている絵面を想像する。
そのもくもく膨らむ想像の、可笑しさに300円の価値があるのかもしれない。